父の実家――祖父が暮らしていた家が空き家になってから、私がやっていたのは「守ること」だけだった。

年に数回、地方にあるその家に帰っては、伸びた雑草を刈り、家の中の空気を入れ替え、傷んでいる箇所がないかを確認する。それだけの往復を、もう何年も続けている。

検討して、選べなかった選択肢

空き家をどうするか、というのは何度も考えた。

解体してしまえば管理の手間はなくなる。移住して自分で住むという選択肢も、正直に言えば頭をよぎったことが何度もある。畑仕事でもしながら暮らせたら、という漠然とした憧れも、心のどこかにずっとあった。

けれど、どちらも簡単には踏み切れなかった。解体には相応の費用がかかるし、近くには高齢の親も住んでいる。今の生活基盤を離れて移住するというのも、現実的な選択とは言い難かった。

売却や処分という選択肢も、正直あまり真剣に検討できていない。近くの墓地には先祖代々の墓があり、その土地ごと簡単に手放そうとは思えなかったからだ。それに、田舎の不動産が本当に「処分できる」ものなのかどうかも、正直なところ怪しい。

結局残ったのは、悪化させないための最低限の対応――草刈りという、守りの行動だけだった。

ある時など、コロナ禍で足が遠のいていた間に水道が水漏れしていたことが分かり、電気は通っているのに家の中に泊まれなくなっていたこともある。仕方なく近くのホテルを取って、そこから通う形で作業をした。

転機は、いくつもの糸が一点に集まった瞬間だった

そんな中で読んだのが、Codexを使って非エンジニアの農家がハウスの自動化に取り組んでいるという記事だった。専門的なプログラミング教育を受けたわけではない人が、市販の安価な部品とAIの力を借りて、現場の課題を一つずつ解決している。その内容が、単純に面白いと思った。

同じ頃、私はすでに別の場面でClaudeを使い始めていた。物販の運用やブログ記事の作成といった、パソコンの中で完結する作業で、思っていた以上に簡単にやりたいことが実現できることを実感していたところだった。

ただ、それはあくまで画面の中の話だと思っていた。目の前にある空き家の雑草地のような、現実の空間の問題にまで応用できるとは、考えたことがなかった。

その時、いくつもの要素が同時に頭の中でつながった。

  • いつか畑をやってみたいという、ずっと持っていた思い
  • 実家のある地域の特産品が、まさにサツマイモだったこと
  • 個人的に思い入れのある食べ物でもあったこと
  • スマート農業の記事を読んだばかりだったこと
  • Claudeの実力を、すでに別の場面で知っていたこと

これらが一つに重なった瞬間、「空き家の裏の、あの雑草だらけの土地で、サツマイモを作ってみたらどうか」という考えが生まれた。

相談して分かった、ちょうどいい作物

とはいえ、実家に行けるのは2ヶ月に1回程度。頻繁に手をかけられない前提で、栽培などできるのだろうか。

そこでClaudeに相談してみたところ、サツマイモは乾燥に強く、肥料や水やりの手間もむしろ最小限のほうがうまくいく作物だということが分かった。日々の細かい世話を前提としない栽培に、意外なほど向いている。

「防御のための草刈り」に訪れていた場所が、「攻めの家庭菜園」の実験場に変わるかもしれない。そう思えたのが、この取り組みの出発点だった。

このブログについて

ここから始まるのは、空き家の管理という後ろ向きな課題を、AIとの対話を通じて少しずつ前向きな取り組みに変えていく記録である。

サツマイモの栽培計画だけではない。雑草の様子を遠隔で確認するためのカメラシステムの設計、部品選び、組み立て、そして失敗。さらには、この記録を載せているブログサイト自体も、AIと一緒にゼロから作り上げている。

パソコンの中の作業も、現実の空間の課題も、同じように一つずつAIと対話しながら形にしていく。その過程をすべて、ここに残していきたい。